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漢方コラム

朝ドラ「らんまん」とアケビたち

漢方コラム
「アケビ?アケビだよね!?」
4/18放送の「らんまん」で、たった数秒脈絡なく画面いっぱいに映った植物に私は喜んでおりました。
その日、牧野博士にゆかりのある高知の植物園では
「アケビ?」「ミツバアケビ?」それとも「ゴヨウアケビ?」と
アケビの種類についてアケビ論争?が繰り広げられていたとか。
マニアの方々はそこまで気になるのですねぇ。
そう聞くと私もやはり気になります。その一瞬の画像を停止しては観て、その種類を確認しようとしましたが…。
 
さて、それらの違いはいったいどこにあるのでしょうか。

アケビの種類

アケビ科アケビ属には、「アケビ」、「ミツバアケビ」、「ゴヨウアケビ」があります。漢方薬となる生薬の基原植物は「アケビ」と「ミツバアケビ」です。
私の興味は薬用が主になりますので植物園で撮影してきたのは専ら薬用のこれら2種類です。
そこで以下に「アケビ」と「ミツバアケビ」の写真を見ながら違いを確認してみたいと思います。
因みに「ゴヨウアケビ」は、牧野富太郎博士が命名したもので、「アケビ」と「ミツバアケビ」の雑種と考えられています。
 
アケビの葉

アケビ属の種類を見分けるには、まずは葉っぱです。アケビの葉は、5枚に見えるものと3枚に見えるものがあります。アケビは、葉身が掌の形に3枚又は5枚に分かれた掌状複葉(しょうじょうふくよう)です。3枚又は5枚の一つ一つを小葉といいます。

↓アケビ
 
写真の下の方の葉が、小葉5枚なのが分かります。
 
  
↓ミツバアケビ  
小葉3枚です。
 
葉の形を比べると、ミツバアケビは葉の縁に波形の切れ込みが入っています。
また、葉の形は、アケビは長楕円形、ミツバアケビは卵形~広卵形です。
 

花の形状

アケビとミツバアケビは花の外観も違います。花の色は、アケビは淡紫色、ミツバアケビは濃紫色~黒紫色です。
花といっても、花びらはなく、花びらにみえるのはガク片です。
アケビ属は雄花と雌花が同じ株についている雌雄同株です。
  
下のアケビの写真では、中央にあるのが雌花、その少し上に羽子板で打つ羽の下についている玉?のようにコロコロとした赤紫の雄しべがついているのが雄花です。
↓アケビ   
   
  
↓ミツバアケビ  
↑右上部に雌花、下部に雄花があります。
 
雄花同士を見比べるとその付き方も大きく違っていることがわかります。
アケビは、花序が束状に釣り下がっていますが、ミツバアケビはブドウの房っぽく見えます。
 
さて、ここまでアケビとミツバアケビの葉と花の違いをみてきました。
そこで、くだんの朝ドラの映像を再度チェックしてみました!
 
…しかし、アケビっぽくもありミツバアケビっぽくもあり分からずにおりました。 
ところが、それから数週間後。 
番組最後に「ゴヨウアケビ」と表記された写真が登場し、そこでようやく気が付きました!
 
あの映像も「ゴヨウアケビ」だったはず、と。
「ゴヨウアケビ」は牧野博士が命名したものですものね。
 
今度は「ゴヨウアケビ」の開花の写真を撮影しにでかけなきゃ♪
気を取り直して、もう少しアケビについて掘り下げていきます。

名前の由来

アケビ属のラテン名はAkebia。これは「アケビ」をラテン語化したものとのこと。 
和名のアケビは、果実が熟して割れて「開け実(アケミ)」になったとか、割れた実が「あくび」に似ているからとか、諸説あるようです。

アケビの果実

アケビの果実はよく知られていますね。
アケビは一つの柄に数個の果実ができますが、それは、一つの花に雌しべがいくつもついていたから。雌しべのうち数個が成長して秋に果実になるので、下の写真のように一つの柄から数個の実ができるのだそうですよ。

アケビの果実は、とても種が多くて食べにくいですね。ぺっぺと種を飛ばしながら食べられるのも、アケビにとっては有難いことなのですよね。
 
(2022.10.30日大薬学部薬草園にて)
 
 

漢方薬の生薬:モクツウ(木通)

「あけび」と入力すると「木通」と漢字がでます。

「木通」は、訓読みで「あけび」、音読みでは「モクツウ」です。漢方は、もっぱら音読みなので「モクツウ」とよびます。 

モクツウ(木通)は、アケビ又はミツバアケビのつる性の茎を、通例、横切りしたものです。つるには細い孔があり、通っている、そのため「モクツウ」を「ツウソウ(通草)」ともいいます。

ドラマで万太郎が大量に購入していた「本草綱目(ほんぞうこうもく)」という本草書にも記載があります。

 

モクツウ(木通)の効能

生薬の働きは、元の植物の形状や性質を、人の身体に投影して捉えることがよくあります。

ツルの中は、空洞というわけではありませんが孔があり、そこを通す、人の身体の中でも通す働きがある、と考えられています。

←モクツウ

モクツウ(木通)は、氣を通じ、血を巡らせ、手足を温める働きがあります。

荒木朴庵先生は「氣を通じ血を循らし、よく手足を緩む」と表現されています。手足の強い冷えに用いる当帰四逆湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)にも配合されています。

水をさばく働きがあるので、いわゆる尿路疾患用の漢方薬にも配合されています。

 

一つ一つ違う植物

 

今回、思いもかけずドラマの中でアケビと思われる映像がバーンとアップになったところから、アケビの種類を確認することにしました。

 

今回は、アケビの違いがわかりました。ドラマの主人公の万太郎が言う「新しいことの発見はワクワクする!」というのも納得です!

 

 

朝ドラ「らんまん」では、主人公の万太郎が「植物はそれぞれ違うんじゃ。それぞれ役割があるんじゃ」といいます。また「雑草という植物はない」とも。 

 

植物が一つ一つ違うように人も一人一人違っていて、それぞれの場で役割がある。私も万太郎に励まされて日々を過ごしています。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 

 

 

文 写真:若草漢方薬局 吉田淳子

(花の写真は2015.04.15に城西国際大学植物園にて撮影。閉園)

参考文献

新訂原色 牧野和漢薬草大図鑑 北隆館

臨床百味 本草綱目 李時珍著 寺師睦宗訓

薬用植物学 東京理科大学薬学部 遠藤次郎ら著

生薬単改定第2版 NTS社 原島広至著

身近な薬用植物 平凡社 指田豊ら著

新古方薬嚢 荒木性次著

 

 

 

 

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