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漢方コラム

「婦人宝」と「当帰芍薬散」の比較

漢方コラム

 

「ふほうとうき……なんとか…は、置いてますか?」

と、お探しの方が、たま~にいらっしゃいます。

 

それはきっと「婦宝当帰膠」かな…と想像しながら

 

「婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)ですか?」と伺うと、たいていの方は

「そう、それ💗」とおっしゃいます。

 

婦宝当帰膠は、イスクラ産業さんが製造販売している液状の医薬品です。

 

「女性にはこれが良いと、友人から紹介された」 

「不妊に良いと聞いた」

「冷え症によいと勧められた」

 といった理由でお探しの方が多いようです。

 

当店は、「婦宝当帰膠」はございませんが、生薬構成と成分含量が同じ

「婦人宝(ふじんほう)」があります。

「婦人宝」は、小太郎漢方製薬の製品で、婦宝当帰膠よりも少し甘味が抑えられています。

 

「婦宝当帰膠」にしても「婦人宝」にしても

 

「〇〇という女性向けの漢方薬ありますか?」

とお見えの方は、その漢方薬がきっと自分に合うのだろうと思って探されているのだと思います。

 

ところが、当方からしますと

 

「本当にその方に合うのかな?」

 

と思ってしまいます。

 

漢方薬は、お体質やお体調により飲むべきか否かが分かれますので、せっかくなら、確認をして納得して飲んでいただきたいです。 

 

そこで今回は、「婦宝当帰膠」や「婦人宝」がどのような漢方薬なのかを、ご参考までに、以前にご紹介した女性用薬として有名な「当帰芍薬散」と比較してみていきたいと思います。 

 

以後は、当店で扱っている製品「婦人宝」で話を進めていきたいと思います。

 

「婦人宝」の構成成分

 

 
 
まず、「婦人宝」には何が入っているのか構成をみてみましょう。のちほど構成生薬をピックアップします。
 
婦人宝 1日量10mL中
トウキ5.52g、オウギ0.36g、ジオウ0.36g、シャクヤク0.36g、ブクリョウ0.36g、カンゾウ0.16g、センキュウ0.16g、トウジン0.36gより抽出した軟エキス4.60g及びアキョウ0.36g を含有しています。
 

婦人宝の効能・効果

では、「効能・効果」はどうでしょう。
 
 
更年期障害による次の疾患:
生理不順、生理痛、冷え症、貧血、腹痛、腰痛、肩こり、頭痛、めまい、のぼせ、耳鳴り
 

「婦人宝」と「当帰芍薬散」の比較

 

 

では「婦人宝」と「当帰芍薬散」の違いを、構成生薬で比較してみたいと思います。

 

「当帰芍薬散」の構成生薬についての解説は、以前の記事をご参照いただけると幸いです。
(血の巡りを整える「当帰芍薬散」の3つの生薬

https://www.wakakusa-kanpou.com/archives/2457
 水の巡りを整える「当帰芍薬散」の3つの生薬

https://www.wakakusa-kanpou.com/archives/2528 )

 

 
漢字表記の方が分かりやすいので敢えて漢字で記載し、順番も入れ替えます。
 
婦人宝:   当帰 芍薬 川芎 茯苓 地黄 党参 黄耆 甘草 阿膠
当帰芍薬散: 当帰 芍薬 川芎 茯苓 白朮 澤瀉

 

どちらも「当帰」「芍薬」「川芎」「茯苓」は含まれています。

 

「当帰芍薬散」の成分について(以前の投稿で)お話ししたように 

ざっくりいうと「当帰」「芍薬」「川芎」は血の流れを整える生薬で

「茯苓」「白朮」「澤瀉」は水の流れを調節する生薬です。

 

「婦人宝」には、「白朮」と「澤瀉」がなくて、「地黄」「党参」「黄耆」「甘草」「阿膠」が入っています。

 

では、以下「婦人宝」の生薬のうち、「地黄(じおう)」「阿膠(あきょう)」「黄耆(おうぎ)」について具体的にみていきたいと思います。

 

地黄(じおう)について

 

地黄は、八味地黄丸、三物黄ゴン湯、芎帰膠艾湯、四物湯、温清飲、七物降下湯、疎経活血湯、当帰飲子、連珠飲、十全大補湯など多くの処方に配合されている生薬です。

 

筒状唇形花が特徴的なジオウ

 

 アカヤジオウ

(2015.6 富山にて)

 

ジオウはアカヤジオウRehmannia glutinosa Liboschitz var. purpurea Makino又はRehmannia glutinosa Liboschitsの根又はそれを蒸したものです。
ここでラテン名にMakinoと入ってますね。変種が牧野富太郎博士の命名のようです💕

ジオウにはアカヤジオウの他にカイケイジオウという種類もあり、カイケイジオウの方が少し大きめということですが、実際によーく見ても違いが私には分かりません汗。 

 

 カイケイジオウ

(2019.5 東京にて)

 

地黄(じおう)の3つの性状

 

地黄にはその製法により、掘り起こしたままの生地黄(しょうじおう)、天日で乾燥させた乾地黄(かんじおう)、酒に蒸した熟地黄(じゅくじおう)の3種類があります。

掘り起こしたままの生地黄は、すぐに変質してしまうようで一般的には出回りません。

一般的に流通しているのは、乾地黄と熟地黄です。熟地黄はネトっとしていて扱いにくいため、熟地黄を乾燥した生薬もあります。

古典の傷寒金匱に則ると乾地黄が用いられ、熟地黄は主にいわゆる補剤として用いられています。 

 

地黄の働き

 

「生地黄」「乾地黄」「熟地黄」はそれぞれ性状が異なります(本草綱目)。

〇生地黄:寒(とても冷やす)

〇乾地黄:涼(さます)

〇熟地黄:甘微温(あまくてやや温める)

 

生地黄と乾地黄は、胃を冷やす働きがあり、胃の弱い方には要注意ですが、「出血を止どめ」「肌肉を潤し養う」有用な生薬でもあります。

 

荒木性次先生の「新古方薬嚢」には

地黄:甘寒(あまくて、冷ます)

血の熱を涼し出血を止どめよく肌肉を潤ほし養ふ

とあります。

 

「婦人宝」には乾地黄が使用されています。

 

 

阿膠(あきょう)について

 

阿膠(あきょう)は、温経湯、黄連阿膠湯、芎帰膠艾湯、炙甘草湯、猪苓湯などに配合されている生薬です。

 

アキョウは、「ロバの毛を去った皮,骨,けん又はじん帯を水で加熱抽出し,脂肪を去り,濃縮乾燥したものである」と「日本薬局方外生薬規格」に規定されていますが、その昔は牛皮からも作られたようです。

「山東阿膠(さんとんあきょう)」が有名です。ゼラチンで代用されることもあります。

 

阿膠は、いわゆるニカワ(膠)です。

漢方薬としてだけでなく、絵画に使う絵具や、書道に用いる墨汁にも使われています。お魚やお肉を煮詰めて、冷めるとかたまり、熱を加えると液体になるコラーゲン成分を思い浮かべると分かりやすいかと思います。

 

阿膠の効能

 

阿膠:味甘平(あまくて温めも冷ましもしない)

効能:心腹内崩、労極まり洒洒瘧状の如きもの、腰腹痛、四肢酸疼、女子下血を治す。胎を安んじ、久しく服せば、身を軽くし、気を益す(神農本草経)

 

荒木性次先生は、「阿膠は味甘平、肌肉の傷れを治し急を緩むることを主どると。故に出血を止どめ煩を去る」とされています。

 

また、浅田宗伯は、「阿膠は味甘平、能く血液を滋潤し、地黄と同じく血分の要薬と為す」としています。

 

黄耆(おうぎ)について

 

 

黄耆(おうぎ)は、桂枝加黄耆湯、黄耆建中湯、防已茯苓湯、防己黄耆湯、清心蓮子飲、当帰飲子、加味帰脾湯、十全大浦湯、補中益気湯、人参養栄湯などに配合されている生薬です。 

 

マメ科のキバナオウギ又はナイモウオウギ

 

 キバナオウギ

(2010.6 理科大にて)

キバナオウギ

(2019.5広島にて)

 

黄耆は、マメ科のキバナオウギ又はナイモウオウギの根を乾燥させたものです。

植物写真では、マメ科の特徴である、羽状複葉であることがわかります。

 

 ナイモウオウギ

花が終わったあとのマメ科っぽい鞘が見られます。

(2015.6富山にて)

 

黄耆の効能

 

黄耆:甘微温(甘くて少し温める)

薬徴には、「肌表の水を主治するなり。故に能く、黄汗(おうかん)、盗汗(とうかん)・皮水(ひすい)を治す。又旁ら身体の腫、或いは不仁の者を治す」とあります。

 

盗汗というのは、寝汗のこと。真夏でもないのに寝汗がでるのは、表の陽気が不足しているため、腠理(皮膚のきめのような)を閉じる力が弱っていて、汗が漏れ出てしまうと考えます。黄耆は、体の表面の力が弱っていて、肌の表面を強めて補う生薬です。

 

 

再度「婦人宝」の内容量をチェック

 

では、ここで再度、婦人宝の内容量をみてみます。

 
婦人宝 1日量10mL中
トウキ5.52g、オウギ0.36g、ジオウ0.36g、シャクヤク0.36g、ブクリョウ0.36g、カンゾウ0.16g、センキュウ0.16g、トウジン0.36gより抽出した軟エキス4.60g及びアキョウ0.36g を含有しています
 
よくみると、トウキの量は5.52gですが、あとの生薬は0.16~0.36gと少量です。それらから抽出したエキスにアキョウがそのままの量で入っています。
 
つまり、「婦人宝」は当帰と阿膠が中心となり、その他の生薬がサポートした形とみることができそうです。
 

構成成分の比較

 

再度、「婦人宝」と「当帰芍薬散」の構成生薬を挙げてみます。

 

婦人宝:   当帰 芍薬 川芎 茯苓 地黄 党参 黄耆 甘草 阿膠
当帰芍薬散: 当帰 芍薬 川芎 茯苓 白朮 澤瀉

 

 

婦人宝に入っている生薬のうち、今回確認した成分の働きをみてみます。

地黄:甘寒 血の熱を涼し出血を止どめ、肌肉を潤し養う

阿膠:甘平 肌肉の傷れを治し急を緩め、出血を止どめる

黄耆:甘微温 体表の陽気を補い、虚を補う

 

 

つまり、「婦人宝」は、「当帰」の血を補い巡らすものが中心となり、「芍薬」「川芎」「地黄」「阿膠」が血を補い、コラーゲン成分のような潤いが加勢し、虚を補いながら巡らす働きがあるとみられます。ここで、「当帰芍薬散」のような「白朮」「澤瀉」はないので、余分な水分を巡らす必要はそれほど勘案されていないことが分かります。

 

言い換えると、「当帰芍薬散」はどちらかというと水っぽさがあるタイプ、余分な水が体に溜まっていて、血の巡りが悪い方の、めまい、むくみ、頭痛、生理不順、生理痛、下痢っぽさがあり、顔色が白い、というタイプの方に向いていて

「婦人宝」は、血が不足している、体の中の渇きがあって巡りが悪く、元気が足りない潤い不足のタイプの方に向いています。

 

ただ、どちらも、胃の弱い方には注意が必要ですので、胃が弱い方には、他の処方を考えた方がよいと思います。

 

おわりに

 

ここまで「婦人宝」と「当帰芍薬散」の比較をして参りました。

 

厳密に言えば、同じ「当帰芍薬散」という名称であっても、その形状や製法によって異なってしまいます。 

具体的には、本来の形状である「散」(生薬をすりつぶした生薬末)か

当帰芍薬散の成分を煮出して煎じ薬のようにして服用するのか、

煮だした液をインスタントコーヒーのように加工して、顆粒や錠剤にしたものを服用するのか、により効き目は変わります。

さらにいえば、使用生薬の品質によっても効き目に差がでてきます。

 

従いまして、単純比較はできないのですが、それでも「当帰芍薬散」という処方の方向性は構成生薬から分かります。そこを基軸として、他の処方がどんな方向性をもっているのかを考えることはできると思います。

 

 

少々想像力が必要となりますし、分かりにくい説明で申し訳ありませんが、一つ一つの生薬の働き、それらが組み合わさった時の全体像を、ご理解いただけると嬉しいです。

 

もし「婦宝当帰膠」または「婦人宝」をお探しの場合に、ご自身に合うのか、他の処方の方が適しているのかなど、ご検討になられるヒントとしていただければ嬉しく存じます。

 

 

ここまでお読みいただきましてありがとうございました❣

 

 

 

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【この記事の著者】若草漢方薬局 店主 吉田淳子 

 

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