日常コラム
疲労と漢方薬~TV番組「情熱大陸」
「先日の情熱大陸みましたか?」
先週のTV番組「情熱大陸」は、疲労について研究している先生のお話だったようでお客様に尋ねられました。
お客様曰く
「西洋薬には疲労に効く薬はないけれど、漢方薬にはあるということで
その先生は漢方にも注目してるって。
やっぱり漢方ってすごいんだ、と思いました!」
「生薬ををみて、ハンゲ(半夏)ってこれなんだ~とか言ってましたよ~。
あ、ハンゲって私も知ってるって思いました」と。
そう伺うと、私も気になりまして、
早速、TVer(ティーバー)で視聴しました。
疲労医学を研究されている近藤先生という方のお話しで
番組最後の方で漢方薬が登場していました。
確かにお客様がおっしゃるような内容でした。
番組内で、生薬のディスプレイが美しく並んでいたのは、
きっと㈱ツムラさんの筑波の植物園隣の資料館ですね。
実際に生薬の香りを嗅がれて「菌核なんだね」とおっしゃっていたのは
きっと茯苓(ぶくりょう)」でしょうね。
疲労と漢方について
さて当店でもご相談において「疲労」を伴う方が多くいらっしゃいますし、私たちも様々な漢方薬を使わせていただいております。
疲労には〇〇湯、と言われる処方や製剤もありますけれど、そういったキーワード検索のように考えるのは漢方らしくない、と感じています。
まずは、原因と表している症状を確認して、身体の中で漢方的にどういうひずみが起きているのかを漢方的視点で考えていきます。
疲労(つかれ)はどんな時に感じるか。
・寝不足
・働きすぎ・遊びすぎ
・病後
・暑さ、寒さ、湿気によるもの
・ストレスからくる
・加齢など
そして
どのくらいの程度なのか
期間はどのくらい感じているのか
などを確認します。
肝腎なのは、どのような症状を呈しているか。
・ただただ寝ていたい
・食べたくない
・食べられるけど美味しくない
・疲れると頭痛がする
・疲れると吐き気がする
・みぞおちが痛む
・下痢をする・便秘をしている
・疲れすぎて眠れない・途中で起きる
・寝汗をかく・汗が漏れ出る
などなど
どのような症状があるのか、組み合わさっているのかによって選ぶ漢方薬が変わってきます。
疲労の対応のさまざま
身体を疲れさせてしまったエネルギー不足なら補うことを考えますし、ストレスによるものでしたら「氣」の痞えを取るように考えます。また、長患いで身体の内側に実した熱のようなものが籠っているならそれを取るようにします。
古典での疲労
漢方の古典の「金匱要略(きんきようりゃく)」に「血痺虚勞病(けっぴきょろうびょう)」というセクションがあります。
この「虚労(きょろう)」を、労によって身体が虚してしまった病と捉えて「疲労」の場合に用いる漢方薬を選ぶ時に参考にすることができます。
問曰血痺病從何得之師曰夫尊榮人骨弱肌膚盛重困疲勞汗出臥不時動搖加被微風遂得之但以脉自微濇在寸口關上小緊宜鍼引陽氣令脉和緊去則愈
(お尋ねしますが血痺の病は何をもってこれを得るのでしょう。先生が答えておっしゃるには、裕福な人で骨が弱くてぷよぷよとしているひとが疲れてしまって汗が出て臥していて…)
このセクションには膠飴(コウイ)、黄耆(オウギ)、酸棗仁(サンソウニン)などを含む漢方薬も登場しています。
さいごに
さて、「情熱大陸」番組内で名前の挙がったハンゲ(半夏)は、咽喉から胸中の気のつまりをとり水の流れを整えます。気味は辛平(味は辛くて、温めも冷ましもしない「平」)。
↑ハンゲ(半夏)
半夏はカラスビシャクという植物の地下の塊茎です。
あぜ道に生えていたものを採って売り、へそくりにしたからとか、へそをくったような形だからという理由で「へそくり」とも呼ばれたようです。
生薬の半夏を味見のために口に入れると大変なことになりますので要注意です。
そういわれて、昔、好奇心で実験的に口に入れたら大変な目にあいました(笑)
カラスビシャク 2014.5..28 御薬園にて
最後までお読みいただきましてありがとうございました。